震災現場を目にして、“自分たちにできること”の先にあったもの
ハート防災のJです。災害対策施設って聞いたことありますか。ネットで調べても、定義らしきものはなく・・・。
今回は、自社で災害対策に取り組まれ、今年1月に浜松市から「企業の社会貢献(CSR)活動表彰」の優秀賞を受賞された浜松市の工務店「マブチ工業」さんに話を伺いました。
馬渕社長です。以前一度取材させていただいたことがあり、一見強面ですが、とても気さくで優しく勉強熱心で、実行力の塊のような方です。その行動力は、2度の震災の時にも・・・。
阪神淡路大震災の1か月後、ゼネコン仲間の陣中見舞いに訪れた際に、悲惨な街の状況を目の当たりにした馬渕社長。ただ、その時は何もできなかったそうです。そして、東日本大震災の時は、バイク仲間のSOSを受け、一番困っている赤ちゃんのおむつやミルクを届けようと、震災の10日後、自ら現地に向かいました。(物資を送ろうと思って色々と聞いて回ったが、そこまで届くかわからない、と言われたそうです。じゃあ、自分で行こうって。すごいです、この行動力。)
津波の後に残った水と瓦礫の間を抜けて、現地に向かう中で目にした光景は、あまりにも酷かった。特に女川地区は想像をはるかに超えるものだったそうです。
その体験から、今この地で「何か自分たちにできること」がスタートしました。
まずは、被災地で一番困ったという携帯電話の電源確保の話を聞き、現場に行く際に積んでいる発電機を、会社に戻ったらすぐに充電するようにしました。何かあった時に、近所の人が使えるようにです。
そして昨年、社屋増築の際に、災害対策施設を完備。それは、会社裏の駐車場にありました。
パッと見ではわかりませんね。 結論から言うと、
災害が起きて電気もガスも水道も使えない時に、近所の人がココに来れば、水が飲めて、充電できて、料理が作れて、トイレもあって、夜でも明るい、そんな嬉しい施設なんです。
上の写真がバルク貯槽システムといって、ガスを燃料に下写真の発電設備と連動して電気を作ります。その電気が、社屋2階の灯りをつけ、夜でも駐車場を明るくします。
馬渕社長いわく、「暗闇のなか不安でいっぱいの時一番大切なのは、少しでも明るいところに人が集まり寄り添うこと」
貯水タンクには、なんと10tの水が。トイレの水にも使用。トイレは、ここ以外にも、駐車場通路に、下水に繋がる口を設けているから、非常用トイレとワンルームテントをセットにすれば、簡易トイレになるとのこと。トイレ、大事ですよね。
炊事場や炊き出しの道具も揃えてあり、4月には近所の子供たちを集めて、炊き出しを計画中。
災害対策車のトラックにも、1.5tの水と発電機(3日は持つ)を搭載。
場所や被害の程度にもよるけど、今までの経験から、3~5日我慢できれば何とか復旧してくる、とのこと。
なぜ、ここまでやるのか?
「自分でもよくわからない。補助金も多少出るけど、ほとんど持ち出しだからね。」って、笑う馬渕社長。
「でも、東北を見てなかったら、ここまではやらんかったかな~」とボソリ。
行動によってのみ状況は変わる。
そんな言葉がピッタリの馬渕社長でした。
帰りに、携帯用浄水器をいただきました。これで簡単に雨水も飲み水に変わるそうです。今度試してみよ。
取材協力/株式会社マブチ工業 http://mabuchik.com/