「みんな元気になるトイレ」全国一番乗り。 ー富士市 防災危機管理課ー

富士は日本一の山。ナンバー1。1等賞。一番乗り。

やっぱり「一番」は凄い。

ハート防災Jです。富士市に来ると、富士山の存在感が違います。でも今日は田子の浦港からの表富士を撮影に来たわけではなく、富士市が全国で一番乗りした「みんな元気になるトイレ」を取材しにやって来ました。

お話をお聞きしたのは、富士市防災危機管理課の太田さん。防災の仕事に就いて11年、内閣府にも1年間赴任した防災のプロフェッショナルです。

「みんな元気になるトイレ」は、公益社団法人助け合いジャパンが行っている災害派遣トイレプロジェクト。災害時の避難者がトイレで困らないように、全国1,741市区町村が一台づつトイレトレーラーを配備し、被災地に全国から集結して助け合おうという取り組みです。詳しくはこちらをご覧ください。http://corp.tasukeaijapan.jp/toilet/

助け合いジャパン代表の石川純也氏は、9.11テロと「世界がもし100人の村だったら」の仕事をきっかけに、今までの広告プロデュースの仕事からソーシャルグッドプロデューサー(世界のさまざまな社会課題を解決するために、クリエイティブの可能性を追求する)へと転身した方。太田さんが絶賛する「防災かあさん」の著者でもあります。

太田さんと石川さんは、内閣府で仕事をしていた時に交流が深まり、プロジェクトの立ち上げ段階から相談を受け、今回の話に至ったそうです。日本一の富士山の麓で、トイレットペーパー生産日本一の富士市がやらずにどこがやる、ということで市長に掛け合い、全国で一番乗り。初めてのことで苦労も多かったそうですが、何よりも道を開くことで他の自治体が続きやすくなったのが嬉しいとのことでした。熱い防災マンです。行動によってのみ状況は変わる。やっぱり一番乗りは凄い。

愛知県刈谷市に続き3台目も動きだすそうで、今後もっと増えていくといいですね。

実物を見せていただけるということで、市役所から太田さんの運転(太田さんのではなく、市のクルマです)で、富士市防災ヘリポートにやって来ました。

オスプレイも着陸可能では?こんな大きなヘリポート、初めて見ました。倉庫の屋上から撮影。

ヘリポートの向かいが倉庫になっていて、トイレトレーラーはこの中にあるようです。

倉庫内は、水や発電機、毛布その他、防災用の備品がぎっしり。メンテナンスも、防災危機管理課の大事なお仕事です。

ありました、トイレトレーラー。思ったより大きいです。「いただきへの、はじまり 富士市」は富士市のブランドメッセージ。込めた想いはこちらを http://fujicitybw.jp/about.html

全国1,741市区町村全配置の頂上へ、ここからスタート。初めの一歩を富士市が踏み出しました。

トレーラーの後ろには、支援した方のお名前。「みんな元気になるトイレ」の資金は、主にクラウドファンディングで集めたものです。目標資金は1000万円。ふるさと納税を活用し、オールインと言って目標に達成しなくても成立するスタイル。目標に行くかどうかも見えない中で試行錯誤しながら、2か月締切ギリギリ最後の最後での目標達成だったそうです。その後も、市に直接寄付される方もいて寄付金総額は1248万円。実際に掛かった費用は、購入費や必要経費含め約1500万円、一自治体の予算では導入が難しい金額。でも太田さん曰く

「トイレトレーラ1台に1500万円は掛けられないし、1台でどうにかなるものでもありません。でも3台集まれば1台500万円です。富士市で必要になった時に、全国から100台集まれば1台15万円。」

それは無理だよ、ではなく、知恵を絞って助け合えばできることがある。教育上の指針にもいいですよね。

実際に見せてもらいました。

夜でも階段が見やすいように灯りがついてます。

とにかく、広くてきれい。まだ使用していないということもありますが、狭くて臭くて汚いという仮説トイレのイメージでは全くありません。

これは海外によくあるウォシュレットではなく、清掃用のシャワーです。水圧もけっこうありました。清潔であることがうれしいです。

鏡や手洗いスペースも。ちょっとした化粧直しもできます。

広さを伝えるために、太田さんに協力いただきました。大人4人くらいまで入れる充分なスペースで、お子様連れももちろん大丈夫。仮説トイレというよりも、ちょっとした化粧室です。

トレーラーの中には同じ仕様のトイレが4台ついています。

屋上にはソーラーパネル。太陽光充電機能や外部電力との接続で、数か月におよぶ避難生活でも長く使うことができます。

出動するときは、クルマで牽引。これからは、イベントなどで活躍しながら、有事の際に備えます。

「今までの被災地の交通事情などを考えると、実際に各自治体からトレーラーが集まるには1週間近くかかります。トレーラーは災害時トイレ対策のほんの一部。大事なことは、普段から行うトイレ対策の啓発です。」とは太田さん。

災害派遣トイレネットワークプロジェクト「みんな元気になるトイレ」の詳細は、富士市のホームページにて。動画もあります。

http://www.city.fuji.shizuoka.jp/safety/c0101/rn2ola0000015oo1.html

ハードも大事だけど、やっぱり一番重要なのはソフトです。いざという時に、行動に移すことができるかどうか。それが生死を分ける。そこに必要なのは知識であり、心構えであり、助け合いの仕組み。取材を重ねれば重ねるほどに痛感します。

ということで、富士市で行う防災セミナーの紹介です。

参加は無料で、災害図上訓練DIGのセミナーもあります。

防災は、普段の生活からはまだまだ遠い存在。でも自然災害は必ず起こります。その時に、正しい知識を持っているかいないか、最低限の備えができているかどうか。それを自分事として捉えられるかどうか。防災先進県の静岡が、いつ来るかもしれぬ南海トラフ地震に向けて取り組むべき重要な課題だと思います。

そこに防災アートがどう機能するのか。「みんな元気になるトイレ」と同じように、当プロジェクト「ハート防災」が一歩を踏み出したことには大きな意義があると思います。まだまだ答えは見えませんが、目指すプロセスが大事ですよね。

防災マン太田さんの熱いハートに影響されました。

3.11を忘れない。ー静岡市清水区【防災フェスタinしみず2018】ー

「東北の震災復興と郷土静岡の防災意識の啓発」のために

【防災フェスタinしみず2018】

皆さんご存知でしたか?清水で毎年行われているこのイベント。

ハート防災Jです。2018年3月11日。東日本大震災から7年が経ちます。静岡もかなり揺れましたが、その後TVに流れてきた津波の映像は想像をはるかに超えるものでした。映像で見るものと、体感したもの、実際に目にしたものでは決定的に何かが違う、最近そう思います。経験しないものは風化が速い、自分事ではないからでしょうか。

【防災フェスタinしみず2018】は、震災をきっかけにSNS等を通じて集まった有志が、ボランティアで開催しているイベントです。運営費の一部と会場内での復興募金を寄付し、震災を忘れることなく地域防災の啓蒙を続けるために。今回が第7回目。継続するのは決して楽ではないと思います。
ちなみに、第1回は「しみず防災フェスタ」だったのを、2回目以降、広がりを想定して「防災フェスタinしみず」と改称したそうです。「in」のあとを変えて実施してゆくこともできるんですね、なるほど。

詳しくはHPへ http://www.bousai-festa.net/index.html

3月11日、イベント会場のJR清水駅みなと口広場に行ってきました。

災害救助犬のパフォーマンスに間に合いました。3つの箱から人を見つけて「ワン!ワン!ワン!」100発100中。NPO法人「災害救助犬静岡」という団体があり、2016年の熊本地震でも活躍したそうです。詳しくはこちら http://www4.tokai.or.jp/kyujokensizuoka/

消防隊のマスコットと子ども達の記念撮影。常に訓練を欠かさない消防士の方々のたくましい肉体に笑顔が乗ると無敵です。カッコいい。

震災では、最後まで避難誘導しながら命を落とされた消防隊員が多くいました。鎮魂の思いを込めて半鐘を鳴らしてきました。

会場内には多くのブースがあり、静岡で防災に関わる地域活動をされている団体等が出店しています。

番町市民活動センターからは、毎年1月に行われている防災イベント「番町防災の日」の紹介。

県内各地で各世代の交流の場をつくり、地域に助け合いの関係を築く活動をしている「静岡2.0」は、”被災する前に、できることをしていきたい”と、静岡の学生と社会人で始めた団体です。

会場から見える富士山も応援しています。

会場となりのマリナート(静岡市清水文化会館)では、なんとモモクロのコンサート。ファンが流れてきて、売上に貢献しています。関係者の気持ちが、モモクロに届いたのかもしれません。

時計が14時46分に近づいてきました。皆で輪になって黙とうする「1000人ハンドレクイエム」の時間です。

3月11日14時46分。この日この時間。日本各地で多くみられる光景でしょうが、震災から7年間静岡に住んできて、皆が手をつなぎ一斉に祈る場面に遭遇したのは初めてです。未被災地静岡という言葉を、ハート防災に関わり耳にする機会が増えました。当事者ではないから、当然当事者意識はない。それでも祈る人は祈る。3.11を忘れないことが、防災意識を高めることに繋がると信じたいです。

他にも様々なブースが出展していました。

防波堤の模型実験。波を見ると思わず反応してしまいます。波の形は、その時の自然環境によって大きく異なりますが、防潮堤の有無が被害の大小を左右することがよく分かりました。

国土交通省の方とお話しすることができました。被災地では、自衛隊や消防隊が目立ちますが、支援物資の輸送や照明車の出動など、国土交通省も色々な活動をしているのですね。

民間企業も参加しています。電気が消えて真っ暗な中でも誘導可能な「光る木の手すり」は、ホテルやビルなどに導入されているそうです。

いつでもどこでも生活可能なトレーラーハウス。日本ではまだ少数派ですが、海外ではよく目にします。これで日本一周したいですね。

昼の部は、催し物あり、色んな取り組みを知ることができるブースあり、体験コーナーありと、大人も子どもも楽しめる感じでした。15時30分には終了し、18時からは夜の部が始まります。好物の広島焼きを買って(収益金に少し貢献)家に帰り、一休みしてから再び清水駅へ。

19時過ぎに会場に着くと、既にキャンドルナイトが完成していました。

真ん中の図柄はリボン。結ぶ、つなぐ、清水と被災地も気持ちで繋がっていますよという意味でしょうか。アメリカでは、胸にリボンをつけている人=何かをサポートしている人というのが当たり前の様です。清水から被災地をサポートし続けますよ、というメッセージかもしれません。

3.11を忘れないという思いを込めて。

キャンドルの外側には、参加者のメッセージが書かれています。一人一人の被災者への気持ちが重なり、心のこもったひとつのアートの様でした。

HEART防災。心の中にアートの文字。気持ちを表現すること、それ自体がアートの始まりであり、防災への一歩かもしれません。

来年、再来年、この先もずっと【防災フェスタinしみず2018】が続くことを祈ります。3.11を忘れないように。