【レポート】キックオフイベント第1弾「吉田町/レック株式会社」

津波を受け流し1000人が避難できる3階建て倉庫兼避難所

焼津・浜通りのまち歩きの次は、バスに乗って吉田町に移動。目的地は、レック株式会社の倉庫兼津波避難所です。

車中でまちめぐり案内人の松田さんが、大井川の洪水対策として古くから採用されていた「舟形屋敷(三角屋敷)」の話をしてくれました。

洪水が流れてくる方向に向け屋敷全体を舟形にして水路をつくり、氾濫した水の流れを直接受けることなく後方へ流す設計です。また、屋敷のそばに「水塚」という盛り土をし、竹や木を植えて避難所としたそうです。

その考え方が、津波対策としてレックの倉庫設計に使われていると聞いて更に興味が膨らみます。

吉田町川尻のレック(株)第5倉庫に到着です。

レック株式会社は、昭和54年に焼津で創業した家庭用日用品の製造販売を行っている会社で、現在は東京に本社を置く一部上場企業。洗剤を使わず「水だけで」簡単に汚れを落とす使い捨てクリーナー「激落ちくんシリーズ」が有名です。

総務部の割場さんが休日にも関わらず倉庫を案内してくれました。

1階入り口から南に向かう通路を抜け、海側に面した倉庫の形状を見ると…

3階建の大きな建物が、海に向かっている船のような形をしています。津波が来た際には、この形状が「舟形屋敷」のように、水を左右に受け流すということ。

さらに、通路のシャッターを開けることで水の通路を確保し、津波の衝撃を和らげるそうです。その後、「河川津波」という特別番組を見る機会があり、水の流れが生死を左右したことを知り、その重要性を再認識しました。

静岡出身で創業者の現会長青木氏が、東北の震災を見てから「何かをしなければ」「津波から300名の従業員の命を守るために」という思いから、平成24年にこの倉庫兼津波避難所を建設しました。企業理念に「社員が理想とする会社」を掲げ、有言実行している経営者です。

1階から階段で屋上に向かいました。(エレベーターもありますが、実際の避難時を想定して歩くことに)

広い屋上の中央には、レックの文字が。ヘリコプターの目印になっています。

4階屋上の高さは22m。東海地震で想定される津波は8mと言われていますが、想定外のことも予測し、この高さにしたそうです。

海岸線から700m、海抜4Mで、当時は近くに避難できる建物はありませんでした。この倉庫は、周りの住民にも使えるように、近隣の方や組長に合鍵を渡すことで、従業員のいない休みの日でも利用可能。地域住民も含め、1000人以上が一時避難できるように作られています。

4階の備蓄倉庫には、500人が5日程度過ごせる水と食料が備えられています。いつ来るか分からない自然災害の為に、これだけの備蓄を継続していくことは並大抵のことではないと思います。

備えあれば憂いなし。備えの美学がここにありました。

最後にみんなで記念撮影。普段生活している中では触れることのない、様々な防災の姿を見て色んな人と意見を交わす中で、気づきや新たな発想を生む良いツアーでした。

ウワサの「そなエリア東京」に行ってきました!

こんにちは。HEART防災、Sです。
先日ついに、うわさの「そなエリア東京」に行ってきました!!

「そなエリア東京」は、国の災害応急対策の拠点として整備された「東京臨海広域防災公園」内にある、防災体験学習施設です。

1階には、津波の高さや速さが体感できるコーナーや、防災グッズのショップがあります。

2階は、学習施設。さまざまな啓発展示がめじろおし!
いざというときに生き抜くヒント、防災グッズ、防災ゲーム…etc.

このイラストやデザインはたぶん、最近「防災のデザイン」に欠かせない存在となっている、寄藤文平さんですね。
同じ展示でもデザインや構成の工夫で「見る気にさせる」。
これもHEART防災が考えるべきポイントのひとつです。

アニメ「東京マグニチュード8.0」のアレンジ版も会場内のモニターで見ることができました。機会があれば、これ上映したいなぁ。

上からはオペレーションルームが覗けましたよ。
映画「シン・ゴジラ」のシーンが回想されます!

静岡県庁にも焼津の防災拠点にも、こういう設備がありますが、やはり規模が違いますね。

そして、何と言ってもこの施設のウリである、防災体験「東京直下72h TOUR」!
(以下、ネタバレ注意!)

予約時間に受け付けをし、タブレットを借りて首からぶら下げます。
体験人数に制限があり、時間を区切っての入場となるので、当然係員さんが案内してくれるんだろうと思いきや・・・ほぼ操作の説明のみで、いきなりひとりでエレベーターに乗せられました!
映画館のあるショッピングセンターのエレベーター内で地震に遭う想定です。

ドアが閉まって、ちょっと緊張!!

無事エレベーターのドアが開き、裏ルートを通って、非常口のサインを頼りに、まずは建物から脱出を試みます。
SCのバックヤードっぽい演出もされています。

脱出した先には、被災したまちが再現されていました。
細部までよくできていてリアルです。
昔よく行ったナンジャタウンとかラーメン博物館みたいな。

まちのモニターでは、ニュースが被災状況や余震の危険性を伝え、緊急地震速報のあのチャイム音が断続的に鳴っています。

あ、向こうで火事が・・・

まちの中では、いくつかのポイントに誘導され、そこで出されるクイズに、タブレット上で答えていきます。

ポイントは複数あるのに全部をまわるわけではないので、スタッフさんに聞いてみると、どのポイントでクイズが出るかは端末によって異なるそうです。
一緒に体験する友達とも違うし、次に行ったときにまた違う、という楽しみもありますね。

無事、避難所の中央公園にたどり着きますが、そこではしばしの避難生活が。

そこには様々な課題があります。
私たち未被災地の者は、生き延びることは考えるけれど、その先のことまではなかなか考えられません。
でも、本当に想像力が試されるのはきっと、被災後の暮らしにおいてなのでしょう。

タブレットを返却するときに、クイズの点数がわかります。
ここは防災先進県に暮らすS!当然、満点でしたー!

最後にショップで「東京防災」を1冊購入。これは本当にいい取組みですよね。
がんばろう、静岡の防災!

この公園は、首都圏で大きな災害が起きたときにベースキャンプになるそうで、ヘリポート機能もあります。広場の向かいには病院がありました。
ふだんは都民の憩いの場として開放されています。この日は雪が残っていましたが、キャッチボールなどをしている人たちもいました。

そなエリア東京」。
東京なので「首都直下地震」がテーマではありますが、この国に住む誰もが、いちどは行ったほうがいいトコロだと思います。
熱心に見ていたので研修の視察か何かだと思われたようで、スタッフさんに声をかけられました。全国から問い合わせや予約がいっぱいなので、ご予約はお早めに、とのこと。
少人数で行く場合は、ふらりと行っても、先に体験時間を予約しておけば問題なく入れそうです。
おススメ!!

 

防災を「楽しくしっかり学ぶ」 -イザ!美かえる大キャラバン!2018 in 神戸ー

ハート防災Jです。神戸取材の目玉「イザ!美かえる大キャラバン!2018」にやって来ました。イザ!カエルキャラバンは、震災後10年の記念事業として2005年に神戸でスタートし、今では全国各地で行われている防災イベント。

コンセプトは、防災をもっと身近に、もっと楽しく。家族や友達と楽しみながら防災知識が身につくのが人気の秘密です。

参加は無料、誰でも自由に参加できます。会場は神戸の新都心「HAT神戸」内のJICA関西、人と防災未来センター。近くには兵庫県立美術館も。

「イザ!カエルキャラバン!」は、地域の防災訓練と、美術家藤浩志さんが考案したおもちゃ交換会「かえっこバザール」を組み合わせた防災イベント。開催当初は、お茶らけてるなど風当たりも強かったそうですが、楽しみながらしっかりと防災を学ぶことができる機会として神戸に根付き、今年で13回目の開催となります。

運営するのは、NPO法人プラス・アーツ。「防災」「教育」「まちづくり」などの分野において、既成概念にとらわれないアート的な発想や想像力で、課題解決や活性化、新たな可能性を追求することを目的としています。理事長の永田さんが、2005年の第1回イザ!カエルキャラバン!を実施したことをきっかけに発足しました。

開催当日は雪が舞う寒い日でしたが、会場は家族連れを中心に子どもからお年寄りまでいっぱい。防災というと硬いイメージが先行しますが、「えっ!これが防災イベント?」という感じで、笑顔と熱気に包まれていました。

会場内の様子をレポートします。

どれにしようかな~。ポイントと交換できるおもちゃを探します。

おもちゃ交換の流れは、①遊ばなくなったおもちゃを持ってきてカエルポイントと交換。②防災プログラムに参加したり、お手伝いしてもポイントがもらえます。③そのポイントで会場内にあるおもちゃと交換します。

持ってきたおもちゃを、かえっこバンクでポイントに。なかなか、まあまあ、そこそこ、でポイントが変わります。ちょっとした表現にも遊びゴコロが。

会場のいたるところで、クイズ形式、ゲーム形式の防災プログラムが行われています。

毛布で担架タイムトライアル 子ども達真剣です。

ジャッキアップゲーム ナマズ(地震)で下敷きになったカエルさんを、どうやって助け出そうかな。

すごろく遊びでぼうさい学び 孫と一緒に防災知識を学ぶ、おじいちゃん、おばあちゃんも数多く見かけました。

その他にも、歌や紙芝居、ゲーム等、いろんな切り口で防災を学ぶコーナーがあります。

和歌山大学災害科学教育センターのトイレが大変プログラムコーナーでは、新聞紙、ペットシート、レジ袋を使ってmyトイレを作成。楽しみながらどんどん知識が膨らみます。

イベントの運営主体はプラス・アーツですが、学生やボランティア、団体、色んな方たちが参加し、各コーナーを構成。

神戸市中央消防署の人達もイベントを盛り上げます。

水消火器で的当てゲームの的もカエルさん。イザという時にこの経験が活きてきますね。

2005年のスタート当初からある定番コーナーから新コーナーまで、JICA関西の1F~3Fで、20を超えるプログラムが実施されています。BOSAIキッチンは、今回初登場の目玉企画。順番待ちで実際に作ることはできませんでしたが、中の様子を見させていただきました。

災害時の食料備蓄の為に、「非常食」と「いつもの食」のボーダーを消してみようという試みで、お鍋とポリ袋でBOSAIレシピづくりを行います。

材料となる、栄養満点、調理が簡単な非常食の紹介。

お皿の代わりに紙の容器を作り、耐熱性ポリ袋を使った調理で、

炊き込みご飯、かぼちゃの豆乳スープ、ユニバーサルチョコの完成。ポリ袋恐るべし。

スタンプラリーも開催していて、各コーナーを回ってスタンプを集めるとガラガラ抽選に挑戦できます。魅力的な景品が揃っていました。とにかく、色んな工夫で防災を楽しく学ぶ仕掛けが満載です。

イザ!カエルキャラバン!で行われている防災プログラムは、阪神・淡路大震災の被災者に聞いた生の声がベースになっています。困ったこと、知ってて良かったこと、防災訓練に期待することなど。理事長の永田さんが、「防災はまちづくりと同じで、コミュニケーションとブランディングが大事」と言っていました。名前を聞いても防災イベントってわかりませんが、ここに来れば防災を学べる。それでいいんだ、と思いました。

驚くのは、人でいっぱいなこと。そして、遊び感覚で楽しみながらも真剣な子どもたちの顔。親なら、自分たちの命を守る防災知識を楽しく学ぶ場があれば、子どもと一緒に参加したいですよね。

防災を学ぶためには、楽しさや遊びゴコロ、ネーミングやデザインの面白さが必要だと感じました。そして、スタッフ自身がそのプロセスを楽しみながら、毎回工夫改善を繰り返していくこと。人が集まらなければ、そこから何も産まれないですから。

静岡で開催される日が来ることを期待しましょう。